薬剤師おきたの薬剤師のやりがいや可能性を考える日記

このブログでは薬剤師のやりがいや可能性に繋がる記事を挙げていければと思っています。※ここで扱う症例は架空のものです。

薬局症例#1-4(2)補足説明

 89314okita.hatenadiary.jp

【デキストロメトルファン代謝経路】

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出典:Lowry et al., J Drug Metab Toxicol 2012

 

デキストロメトルファン代謝経路は上記にあるように2経路の代謝経路があり、どちらの経路もCYP2D6が関わっているため、CYP2D6による代謝が遅れてしまうと血中濃度が上昇します。

 

実際に欧米では、CYP2D6の阻害薬であるキニジンと合剤にしてデキストロメトルファン血中濃度を保つように設計された薬剤が、情動調節障害の治療薬として承認されています。

 

 

セロトニン症候群(2)(3)について】

通常は薬物に関連した中枢神経系におけるセロトニン作動活性の亢進によって生じる生命を脅かす可能性のある病態を指します。

症状としては、精神状態の変化、高体温、自律神経および神経筋の活動亢進などがあります。

ほとんどの場合、薬物の用量変更または開始から24時間以内に現れ、その大部分は6時間以内に起こります。

臨床像の重症度には大きな幅があり、

精神状態の変化:不安,興奮および不穏,驚きやすさ,せん妄
自律神経の活動亢進:頻脈,高血圧,高体温,発汗,シバリング,嘔吐,下痢
神経筋の活動亢進:振戦,筋緊張亢進または筋硬直,ミオクローヌス,反射亢進,クローヌス(眼球クローヌスを含む),伸展性足底反応
のいずれかを示し、神経筋の活動亢進は上肢よりも下肢において顕著なようです。

 

 

セロトニン症候群はSSRIを過剰摂取した人の15%で発症しているとの報告もあり(4)、ある調査では85%の医師がこの症候群を見落としているとの報告もあります(5)

薬剤師としては、専門医ではない医師が関わる際や相互作用によって過剰摂取になってしまう場合、軽微な症例で見落とされやすい場合に特に注意しておきたいと感じた症例でした。

 

【tips】

  • 発熱で疑うのは3つ。感染症膠原病、悪性腫瘍。その他に薬剤性などがある。
  • 感染症を疑っているときの病歴チェックにSTSTAというのがある
  • VCDはしばしば喘息として診断されていることがある。

 

【まとめ】

  • フレカイニドで不整脈、プロパフェノンでめまいやふらつきという中枢性の副作用は血中濃度が上昇しすぎたことによる副作用なので、そのような副作用が出た患者はCYP2D6PMの可能性がある
  • セロトニン症候群はSSRIを過剰摂取した人の15%で発症している
  • 85%の医師がセロトニン症候群を見落としているという報告がある
  • セロトニン症候群は疑ってかからないと見落としてしまうことが多いので、発症しやすい条件を整理しておく必要がある

 

参照)

(1)Clin Pulm Med 2006;13(2):73-86

(2)MSDマニュアル

(3)UpToDate

(4)Isbister GK, Bowe SJ, Dawson A, Whyte IM. J Toxicol Clin Toxicol. 2004; 42(3):227-85

(5)Mackay FJ, Dunn NR, Mann RD. Br J Gen Pract. 1999 Nov; 49(448):871-4.